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祖父

祖父が逝った。
その日は1日そわそわと落ち着かなくて、仕事を早く切り上げて静岡の祖父の所へと向かった。祖父はベッドの上で、全身で息をしている状態だった。小生が到着した時、わずかに目を開けたけれど、会話はできなかった。それから目を閉じ、まもなく息をするのをやめた。


祖父は生涯を通じて戦う人だった。小さな山寺の住職を務めながら、あらゆる政を引き受け、書を書いた。贅沢と甘えは自他共に許さず、幼なかった小生もずいぶん叱られた。少し間違ったことをすれば、従兄弟と共に本堂の柱に縛り付けられ、わんわんと泣いた。一方で、祖父に褒められることは特別なことで、そのために少しでもいい点をとろう、早く走れるようになろうと頑張った。遠い昔の思い出だ。


最期、祖父の痩せた顔は蝋燭のように見えた。かつて大火をあげていた人は、1点の灯となりながらも、忍び寄る闇と懸命に戦っていた。天井の四隅に漂う闇に死神を見た気がした。それでも祖父は孫全員の顔を見るまで、自らの命を燃やし続けたんだと思う。最期まで本当に気丈な人だった。


祖父の死はあまりに唐突すぎて、受け入れるまで時間がかかった。いや受け入れ方を知らなかった。けれど死の翌日にふと思った。
「自分が設計したものを、祖父に歩いてもらいたかった。」
祖父に褒められたい。かつて子供の頃と何も変わってない自分がいた。どうしてずっと忘れていたんだろう。いや、違う。心の核としてそれは在って、小生をこの場所まで導び続けてくれていたのだ。そのことに気がついた瞬間、申し訳なさと悲しみと感謝が津波のように押し寄せた。


おじちゃん、本当にありがとう。これからは私がその灯を継ぎます。
だから、どうか安らかに眠ってください。
by neko1dozen | 2008-12-03 01:20
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